『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』は、ゲーテの希望の名言とカフカの絶望の名言を対話形式で紹介しているユニークな名言集です。
ゲーテが
希望は、わたしたちが生きるのを助けてくれます。
(シャルロッテ・フォン・シュタイン夫人への手紙)
と言えば、カフカは、
朝の希望は、午後には埋葬されている。
(日記)
とゲーテの「希望」を打ち消します。
カフカはそんなに絶望的な生涯を送ったのかといえば、そうでもありません。
裕福な家の子として生まれ、普通のサラリーマンとして生きています。
ドラマチックなことは何も起きない、ごく平穏なサラリーマンの一生です。大学を出て、就職をして、そこそこ出世もして、恋愛もして、病気をして、死んでしまいます。
カフカは絶望的だけでなく、超消極的でもあります。
ぼくは静かにしているべきであろう。
息ができるというだけで満足して、
どこかの片隅でじっと。
(日記)
どうして、ごく平凡なサラリーマンのカフカが、絶望的な言葉を吐きつづけたのか。
バブル崩壊後、「普通のサラリーマン生活」が手に入りにくくなった現代日本社会と比較しながら読んでみるのもいいかもしれません。
カフカの『日記』(ドイツ語版)はKindleで無料で読めます。