前回は、ブレーメンを目指すロバと猟犬が「首が危ない」猫に出会いました。
なぜ首が危ないのでしょうか。
前回:「ブレーメンの音楽隊」をドイツ語で読む 第4回 ~リストラ寸前の猫~
“weil ich nun zu Jahren komme, meine Zähne stumpf werden, und ich lieber hinter dem Ofen sitze und spinne, als nach Mäusen herumjagen, hat mich meine Frau ersäufen wollen; ich habe mich zwar noch fortgemacht, aber nun ist guter Rat teuer: wo soll ich hin?”
「寄る年並みで、歯はすりへって平たくなってるし、暖炉のそばに座って糸を紡いでいる方が好きなの、ネズミを追い回すよりもね。うちのおかみさんは私を溺れさそうとしたのよ。だから逃げてきたわ。だけど、今はいい考えが浮かばなくてね。どこへ行ったらいいのかしら?」
via 「ブレーメンの音楽隊」
weil以下で猫が首が危なくなっている理由を語ります。
weil ich nun zu Jahren komme, meine Zähne stumpf werden, 寄る年並みで、歯はすりへって平たくなってるし、
zu Jahren kommenで「長生きする」です。
stumpfは「(刃物などが)鈍い、なまくらな、切れ味のなまった」です。scharf(鋭い、シャープな)の反対語です。
und ich lieber hinter dem Ofen sitze und spinne, als nach Mäusen herumjagen, 暖炉のそばに座って糸を紡いでいる方が好きなの、ネズミを追い回すよりもね。
年をとって歯に鋭さがなくなってきて、勤労意欲がなくなってきたようです。
hat mich meine Frau ersäufen wollen; 私の女主人が私を水死させようとした。
ersäufenは「おぼれさせる、水死させる」です。
ちなみにウムラウトがなくなってersaufenだと「おぼれる、水死する」となります。
ich habe mich zwar noch fortgemacht, だから私は逃げてきた
sich fortmachenで「(急いで)立ち去る、逐電する」です。
猫もロバや猟犬と同じく、飼い主に殺されそうになってあわてて逃げてきたのでした。
aber nun ist guter Rat teuer: wo soll ich hin?” しかしいい知恵が浮かばなくてね、私はどこへ行けばいいかしら?
Da ist guter Rat teuer. で「どうもいい知恵が浮かばない、さあ困ったことになった」です。
直訳すると、「いいアドバイスは高価だ」です。
ことわざで、Guter Rat kommt über Nacht.(一晩寝ればいい知恵も浮かぶ)というのがあります。
猫も飼い主に殺されそうになってあわてて逃げてきましたが、これからどうやって食べていけばいいのか悩んでいました。
『ブレーメンの音楽隊』は長寿社会で高齢で働けなくなった人、働く気力がなくなった人がどうやって生きていけばいいのか、ヒントを与えてくれそうです。